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一月ほど経ち、望月家から召集がかかると私は少ない荷物をまとめすぐさま向かう。
初めて対面した父は眼光鋭く、近寄りがたい雰囲気で一瞬腰が引けてしまうほどだった。
しかし、堂々としていなければ、話が流れてしまうかもしれない。私は必死で恐怖と緊張を押さえ込み、冷静な態度で向き合った。
それが幸をなしたのか、それとも奥様が話を通してくれたお陰なのかなんとか採用となった。
ただし、お互いの親子関係は他言無用という条件付きだ。
後々、宗佑に仏間で語ったのはどうしても宗佑に自分の事を知ってもらいたいという私のわがままだ。
私の最初の仕事は10歳のお嬢様のお世話係だった。
初対面にして胡散臭そうな目で、私を見ていたのは今でも印象に残っている。
性格は勝ち気な方だが、身体があまり強くないようで度々熱を出しては寝込むことも多かった。
二年ほど経った冬のある日、奥様が患った病を悪化させ他界された。
奥様のためと今まで頑張ってきたこともあり、私は深く絶望し今後何を目的に生きていけば良いのか分からなくなっていた。
そんな時に、涙一つ見せず気性に振る舞うお嬢様を見て、私は今度は奥様の残したこの方をお守しようと決意する。
それに、お嬢様には言えないが腹違いの兄弟であることは違いない。
旦那様も奥様を亡くされ、もぬけの殻になり事業に手付かずになっていた。
私はすかさず、株の取引や都内での事業展開の見直しをし、損失を減らす手助けをする。
どうにか持ち直し、村への寄付や行事の企画運営で威厳を保つことが出来た。
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