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「……お嬢様は気づいていらっしゃったようですね」 村田は目元に涙を溜め、伏し目がちに手紙を見つめる。 「なにをですか?」 「私が異母兄弟ということですよ」 村田は表情を和らげる。 「知らないふりをすることが、お互いのためだと思っていました。あの時は兄弟のような真似事が、出来るような立場ではなかったですからね」 宗佑はなんと答えたら良いのか分からず俯く。 「やはりお嬢様は鋭い方ですね。さすが私達の関係まで見抜いていた方だ」 村田は宗佑に優しい視線を投げかける。 過ぎてしまったことはどうすることも出来ない。生きているうちにお互いがそのことを共有し合っていたら、二人の関係性が変わっていたのかもしれない。 「でもどうして三奈子ちゃんは気づいていて、父親に問い詰めなかったのでしょうか」 三奈子の性格なら黙ってるはずもなく、正蔵に突っかかって行きそうなものだが。 「これは私の推測ですが、奥様が止めていたのかもしれませんね。騒ぎ立てたら、私が追い出されることになるとでも言ったのではないでしょうか」 宗佑は複雑な気持ちで村田を見つめる。こうなってしまった今、どうすることも出来ない。 「兄弟らしいことはなにも出来ませんでした。でも――」 村田が宗介に向けて手紙を差し出す。 「最後の部分に貴方を譲る代わりに、幸せにしてあげて欲しいと書かれています」 宗佑は堪え切れず涙を零し、嗚咽を漏らす。とめどなく流れる涙が手紙を濡らし、黒く滲む。 期待に答えられず、村田を好きになってしまった自分が悔やまれる。でも、好きになってしまった以上はどうすることも出来ない。 「私はお嬢様であり、妹でもある彼女の最後の願いを叶えるべきだと思っています。そもそも言われなくとも、貴方を幸せにするつもりですが……」 村田は宗佑をそっと胸に収める。宗佑も村田にしがみつき涙を流す。 心の中で何度も何度も三奈子に謝罪しながら――。
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