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「私はこれから幾度も困難に、見舞われることになるでしょう。親戚の方々もそう簡単には、納得してくれないかと思います」
村田は一つ息を付き、抱きしめる腕を強める。
「そんな時に傍にあなたがいてくれたらどんなに良いか……」
宗佑は息を詰める。自分もこの人の傍にいたいと、まさに願っている。
「……達彦さん」
宗佑が静かに呼びかける。静かに腕を解き、向かい合う。
村田の目元がほんのり赤く染まっていた。
「僕もあなたと同じ気持ちです。あなたの傍にずっと居たいです」
宗佑は腕を村田の首の後ろに回し引き寄せると、自ら口づけをする。
村田も答えるように宗佑の腰に手を回す。
自分は心の境界線をやっと超えることが、出来たのかもしれない。
これから先、まだまだ二人は超えるべき境界線が待ち構えているだろう。
それでも一歩を踏み出し、新たな場所を二人で踏みしめていきたい。
宗佑は唇を離し、村田を見上げる。
「愛してます……達彦さん」
「私もです。宗佑」
その瞬間、風が強く吹き荒れる。まるで三奈子が嫉妬しているようだと宗佑は吹き出した。
ハラハラと柔らかく舞い散った青葉が、二人を祝福するように包み込んだ。
END
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