境界線の恋心

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「村田さん?」  動揺を悟られないように静かに振り返る。  あの頃より背も伸び、顔つきも少しだけ男らしくなっている。それでも相変わらず綺麗な顔立ちで、儚くも見えた。  驚いた顔をしている宗佑を愛おしく思い、「あなたを待っていたんですよ」と言葉を零す。  ほんのりと色づいた頬が緊張の色を表し、宗佑も自分と同じ気持ちなのではと思わずにはいられない。  後は自分の悔いが残らないように、思いの丈を宗佑にぶつける。  まさか、受け入れてくれるとは思ってもみなかったが心の中は沸き立つ。  その一方で、お嬢様や奥様への罪悪感もあって自分の中でせめぎ合っていた。  罪悪感を抱えつつも、宗佑が美しく涙を流し自分に縋ってくる姿を見たくて何度も逢引を重ねた。  今だけでいい。お互いの立場ではそう長く続くとは思っていない。分かっていたはずだった。  何処かで区切りをつけなければと、会う度に思っては手放せずにいた。  逢引を繰り返して一年後、罪を清算する時が来てしまった。
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