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「俺たち、仕事のしすぎだよな」
目の前にコトリとおかれたカップからほろ苦い香りがゆらゆら揺れる。
深い息を吸い込んで鼻腔をくすぐる香ばしい香りは、
彼がインスタントではなくドリップコーヒーを淹れてくれた証だ。
「ありがと」
彼にお礼を言ってカップを両手で包むと同時に彼が私の隣のデスクに腰を掛けた。
「なあ、今度時間作って飯行かねぇ?」
「メシ? いいよ。焼肉でしょ?」
眞辺とのご飯はほとんどが焼肉だ。
「毎回焼肉って……色気ねえな」
「色気より食い気。話してたらホントに食べたくなってきた。でも……しばらく行けないかもよ?
ほら、また新しい案件……」
コーヒーカップを片手に何気なく開いたメールボックスで、たった今新規のメールを受信した。
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