夜中のメール

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「ちょっと眞辺」 声を掛けたが返事はない。 もう口を開くのも億劫なのだろう。 彼は仰向けになってアイマスク代わりに自分の腕を額に乗せると大きなため息を吐いてすぐに寝息を立て始めた。 私は仮眠用のブランケットを彼の上から掛けると自分は夏の冷房対策に使っていたひざ掛けを手にして休憩スペースのソファに倒れ込んだ。 どこででも眠れるようになったのは、この仕事に就いてから身に着けた特技だった。 深いまどろみの中に落ちてどれくらい経ったのか、 かすかな物音で目を覚ました。 「すみません、起こしちゃいましたか?」 眠い目をこすって視界に入るのは 24歳の新人で、眞辺の下で勉強中の後輩デザイナーの橋爪翔(ハシヅメショウ)だった。
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