一日の終わりと始まりの予感

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帰りの電車では決まって眠ってしまい、半分寝ぼけたその顔が両親の目には疲れ切った顔に映ったらしい。 遅くに帰る私を心配して半年も経たないうちに転職を勧めてきた。 『そんな生活してて身体でも壊したらどうするのよ?』 その度に私は大して取り合うこともなく「大丈夫」と軽く返事をしたが、やがて母親はこう言うようになった。 『女なんだから、そんなに無理して働くことないでしょ』 私は軽く受け流すことが出来なくなった。 今の会社に就職が決まったことは、私にとっては運命だと思ったくらい、奇跡的なことだった。 自分が望む仕事に就けて、そればかりか、上司や同僚にも恵まれてた。 転職なんて、微塵も頭に浮かばなかった。
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