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最後の一言まで丁寧に口にすると、
そこにいつもと違う余韻が生まれた。
私はその余韻に糸を引かれるようにゆったりとした動作で受話器を戻した。
「……さん。 杉浦さんてば」
「ん?」
「電話、終わったんですか?」
声を掛けてきたのはこの仕事に眞辺よりも興味を抱いている橋爪くんだ。
「あ、うん」
少しぼんやりしていた。
「やけに優雅な電話ですね」
「え?」
「いつもなら電話しながらキーを打ってるのに」
「ああ……うん、そうかもね」
電話を肩で挟んでパソコンのキーボードを打つのは常日頃。
もしかしたら電話の度にそうしているのかもしれない。
でも、今は……
「何か、倉田さんと話してたら、そんなことするの忘れてた。っていうか、そんな余裕なかったのかも」
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