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「……ありきたりな理由」
私は軽く言った。
「……価値観の違いよ」
それは嘘ではなかった。
すると、眞辺は期待どおりの答えではなかったのか、
「マジでありきたり」
と、小さく呟くとこちらに向けていた身体を転がし仰向けになった。
「……つまらない理由でごめんね」
私は笑い、雑誌を閉じた。
「そろそろ寝るね。お疲れさま」
「【お疲れ】じゃなくて【おやすみ】だろ」
「あ、そうだね。おやすみ」
私は眞辺のいる布団を迂回してベッドに潜り布団を被った。
眞辺の予想外の質問に気持ちが高ぶったが、部屋の中の静けさが徐々に鼓動を落ち着かせてくれる。
眞辺もそれきり声を掛けてこないのでようやく眠ったのだろう。
私に眠気を運んできてくれたのはそれから少し後のことだった。
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