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「ハンカチって……あの黄色のか?」
「……そう。ラッキーカラーの」
私が言うと、眞辺が「どこがラッキーなんだよ」と呟いた。
「で、倉田はハンカチを返すから会おうって魂胆かよ」
「倉田って……『さん』付けなよ。魂胆じゃないし、親切なだけ。私は次回の打合せまで持っててもらっていいって言ったんだけど……。せっかくだから食事でもどうかって……」
耳元に、電話越しに聞こえた倉田さんの低くて心地よい声がよみがえる。
昨晩、自宅から彼に電話を掛けた際、プライベートで会えないかと誘われたのだ。
「あ、言っとくけどまだ返事してないし、どうしようか迷ってる。得意先だから断るのもなんか……」
言い訳がましくなってしまい、最後は消え入るように言った。
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