内緒の約束

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少しでも物音があった方がいいと思い、お湯を沸かしながら倉田さんに電話を掛けた。 そわそわしながら片方の耳ではコール音を聞き、もう一方の耳は眞辺がいる方へ神経を張った。 実際、そんなことが可能かどうかは別にして、私の気持ちはそうだったのだ。 しばらく鳴ったコール音が途切れると、 「はい、倉田です」という心地のいい声が耳元に届いた。 「……あ。アートプレイデザインの杉浦です」 「いつもお世話になります」と挨拶したところで倉田さんが笑った。 声を潜めたせいか、はたまたその声が事務所に独特の響きを持たせたせいだろうか、彼には私の今の状況がすぐに分かったようだ。 「まだ仕事中なんですね?」 「はい……。あまり遅くなってしまっては申し訳ないと思って……」 すると、彼は先程よりも大きく笑った。 笑い声の周りに足音が響く。 一瞬であの黒光りする四葉のビル内が思い浮かんだ。
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