電話の女【眞辺Side】

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「さっきから何考えてるの?」 「いや……何でも。そろそろ出るか」 目の前の空の食器を眺めて椅子を引くと彼女が俺の方へ身体を向けて顔を突き出した。 「まさか、ここでおしまいじゃないよね?」 「……まだ食う気か?」 「違う! わかってるくせにはぐらかさないでよ!」 この女は人との空気を読まないばかりか、その場の空気も全く読もうとしない。 隣の客が見てるじゃねぇか。 「とにかく出るぞ」 俺は席を立ってさっさと支払いを済ませた。 望んでいる訳ではないが、予想通り「ごちそうさま」も「ありがとう」もないままに店を出る。 義務は果たした。 店の扉を閉めた途端に俺もたまらず口を開く。 「約束は一緒に食事をする、だったな」
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