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「何言ってるの? 男が女を食事に誘ったら、それだけだなんて誰が思うのよ!?」
「俺はそういう意味で言ったけど」
「な、何よそれ!? 眞辺さん、最初から私のこと年下だと思ってバカにしてるでしょ? 全然女として見てくれないし」
「バカになんてしてない。ただ、俺は君に魅力を感じないだけ」
季節は梅雨の入り口だった。
雨こそ降っていないがじっとりと鬱陶しい湿気が身体に絡む。
俺は生温かい風に顔をしかめながら「駅まで送るから帰るぞ」と、彼女の先手を取って歩き出した。
すると、腕をもぎ取られるように力いっぱい引っ張られた。
「おいっ」
掴まれた手を振りほどこうとすると、逆に彼女の力が加わり、俺の腕は彼女の胸の中に取り込まれた。
「帰さないから……」
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