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彼女が俺を睨むように見上げた。
「離せ」
「イヤ」
「離せって」
「イヤ……」
威勢のよかった彼女の顔が俯いていく。
演技なのか、実際そうなのか不明だった。
「一度だけでいいから……」
離そうと動かすたびに柔い感触が腕にまとわりつく。
俺はピタリと腕を止めた。
「そう言えば、どんな男も落とせるってわけか?」
俺は吹き出した。
「俺も安く見られたな。ついでにアンタも自分を安売りしすぎだけどな」
「違うってば! 一度で……眞辺さんを虜にしてみせる」
もはや大人の身体をした子供だった。
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