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「……かもな」
俺が笑うと、杉浦もようやく自然な笑みを浮かべた。
杉浦は箱から一つ取り出すと、丁寧に包みをほどき、はだかになった栗きんとんを差し出した俺の手のひらに乗せた。
「サンキュ」
俺は杉浦が自分の分をほどくのを待って二人同時に口に入れた。
「ん、旨い」
「ホント、美味しいね」
杉浦も満足そうに目を細めていた。
優しい甘みが口の中に広がる。
甘いものは疲れを和らげ、心を和ませる。
少し心が軽くなった気がした。
「もしかして俺たちの晩飯……これかよ」
「かもね」
二人の笑い声が車の中に響いた。
「さてと、帰りたくねえけど、行くか」
少しだけ覗かせた本音くらい、許して欲しい。
俺はそんなことを思いながらエンジンをふかして駐車場を出た。
そして、軽快に車のスピードを上げて本線に戻った。
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