電話の女【眞辺Side】

25/27
427人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「もう一個、食いたい」 口の中の栗きんとんがなくなって、俺は杉浦にねだった。 老舗の和菓子屋の看板商品といえるこの栗きんとんは、素直に旨かった。 杉浦はすっかり機嫌をよくしたのか、 「ね? 美味しいでしょ?」 と、言いながら俺に新しい栗きんとんを渡してくれた。 俺はゆっくりと味わいながら道路の先を見つめていた。 仕事もプライベートも…… ……焦るとろくなことにならない。 あの男の笑顔が脳裏によみがえった。 ……倉田涼平。 あの男。 初めて会った時から、いい印象は持てなかった。 なぜって、 いい男だから。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!