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「もう一個、食いたい」
口の中の栗きんとんがなくなって、俺は杉浦にねだった。
老舗の和菓子屋の看板商品といえるこの栗きんとんは、素直に旨かった。
杉浦はすっかり機嫌をよくしたのか、
「ね? 美味しいでしょ?」
と、言いながら俺に新しい栗きんとんを渡してくれた。
俺はゆっくりと味わいながら道路の先を見つめていた。
仕事もプライベートも……
……焦るとろくなことにならない。
あの男の笑顔が脳裏によみがえった。
……倉田涼平。
あの男。
初めて会った時から、いい印象は持てなかった。
なぜって、
いい男だから。
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