電話の女【眞辺Side】

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「もう一個、食いたい」 口の中の栗きんとんがなくなって、俺は杉浦にねだった。 老舗の和菓子屋の看板商品といえるこの栗きんとんは、素直に旨かった。 杉浦はすっかり機嫌をよくしたのか、 「ね? 美味しいでしょ?」 と、言いながら俺に新しい栗きんとんを渡してくれた。 俺はゆっくりと味わいながら道路の先を見つめていた。 仕事もプライベートも…… ……焦るとろくなことにならない。 あの男の笑顔が脳裏によみがえった。 ……倉田涼平。 あの男。 初めて会った時から、いい印象は持てなかった。 なぜって、 いい男だから。
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