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「こちらの勝手でご迷惑をお掛けしてるのに、送っていただくなんて……本当にすみません」
彼の車が見える直前まで、私は彼に平謝りしていた。
「もういいってば」
と、彼はクスクスと笑った。
「その代わり……」
彼が何かを言い掛けながら私を見る。
「この前のプライベートで会いたいって、言ってたアレ、ここで返事もらってもいいかな?」
倉田さんは子供のような無邪気ないたずら顔で私を見ながらも、その眼差しは有無を言わせないものだった。
「あ、アレ……ですよね」
意味のない言葉の繰り返しは、単なる時間稼ぎ。
……どう返事をしていいのか、まだ答えが出せずにいた。
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