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最後の見直しを終えてデータを送り、私たちは解放された。
大きなあくびを交換し合うように、私と眞辺は同時に伸びをした。
一つが終わってもまた次が始まる。
自分をリセットして新しい戦いに備えるために、私はいつもどおり一度家に帰る。
二人に断りを入れ、出社し始めたほかの社員と入れ替わりにビルを出た。
秋になり、朝日も夏よりぐっと穏やかになった。
新鮮な空気を吸い込むと自分の身体が思った以上に軽いことに気付いた。
わずかな時間だが、ベッドで仮眠を取れたことが功を奏したのだろうか。
身体よりも辛いのは、穏やかな朝の秋風にさらけ出された顔だった。
電車の窓に映る、寝不足と乾燥で荒れた肌が痛々しい。
そんな時、ふと、優香のふっくらした肌を思い出した。
もしかすると、今は結婚の準備のために、さらに肌に磨きをかけているかもしれない。
私はすっかり水分のなくなった頬を手のひらで押さえながらバッグからスマホを取り出した。
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