せめぎ合いー2

2/38
前へ
/38ページ
次へ
倉田さんの眼差しが私の心も身体も縛り付けるみたいだ。 彼って…… こんなにも強引な人だっただろうか。 今日の彼は今までと違う印象を私に与えた。 私が戸惑う中、彼は続けた。 「それに僕はあのとき…… 眞辺さんから君の名刺をもらったときから、なんとなく、直感してたんだ」 「直感……ですか?」 以前の打合せの中で、彼から『直感を大切にしている』とは聞いた覚えがある。 「そう。この人に会ってみたい。きっと素敵な人だって」 「名刺だけでそんなこと……」 私がやっと顔を逸らして苦笑いしかけると、彼は心外とでもいうように、眉をひそめた。 「僕の直感、バカにしましたね?」 「いえ、すみません! そういう意味じゃ……」 慌てて否定すると、倉田さんは「冗談ですよ」と微笑んだ。 「僕、自分の直感に自信があるんです。名刺だけが根拠じゃないですよ。眞辺さんの口ぶりからも感じましたよ」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

480人が本棚に入れています
本棚に追加