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そして、彼女は言った。
「結婚したら不自由なく暮らせるとは思うけど、私からは自由もなくなるわ」と。
そして、儚げに微笑む。
しかし、それは笑顔には見えなかった。
少なくとも目の前にいるのが、結婚が決まって喜んでいる親友にはとても思えなかった。
私は彼に相談するようにと勧めたが、優香の反応は芳しくない。
「いつも……何かを決めるのは彼で、何かをしようとするときは、いつも相談じゃなくて決定事項。もう決まっていることなの」
「結婚も……そうなの?」
「自分との結婚が……私の一番の幸せだと思ってるから」
だから彼は聞く耳をもたないし、聞いたところで冗談だろうと笑われるだけだと優香は何もかも諦めた様子だった。
しばらく優香の思いを聞いて、否が応でも最終的に行きつく問いはこれしかない。
鉛を含んだように口が重い。
「結婚……やめるの?」
優香は今日一番切ない笑顔を見せた。
「やめるなんて……もう無理よ」
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