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「なんか……私なんかが……って思うと気後れしちゃう」
華やかな彩(イロドリ)を前に優香がそう言ったのか、彼女は一歩後ずさった。
だから私は一歩前に出る。
「何で? これなんかすごく優香に似合いそうだよ」
私は秋らしくブラウンとサーモンピンクの絵柄のスカーフを一つ手に取った。
シルクの感触が肌に優しい。
「ホントに?」
「うん、優香はピンクが入ってるのがいいと思うなぁ」
私が優香の首にスカーフを掛けると、思った通り彼女によく似合った。
優香も自分で鏡をのぞくと、まんざらでもなさそうにゆったりと微笑んだ。
そして、再び陳列されたスカーフをじっくりと見つめ、
「じゃあ、美尋はこれ」
と、カーキ色ベースのスカーフを手に取った。
私は「へえ……素敵」と、それを受け取り首にふわりと掛けた。
「どう?」
「すっごく似合う!」
優香が興奮気味に顔を突き出す。
その笑顔に女の私がクラっときそうだ。
私たちはそれぞれに決めたスカーフを手にしてレジに向かった。
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