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そのスカーフが、今日のショッピングの唯一の戦利品だった。
だけど、私はとても大きなもののように思えた。
優香はこれから、このスカーフを戦闘服の一つにして、
目を背けられない現実と戦う覚悟なのかもしれない。
帰り際、彼女が見せる笑顔を見て、心底ホッとした。
「じゃあ、彼によろしくね」
優香がスカーフの入った紙袋を上げて手を振った。
「うん、優香も頑張って」
私も手を振り返すと、優香は大きく頷いて進行方向へ身体を向けた。
私は彼女の凛とした背中を見つめて見送った。
そして、一人になった時、ふと気づいた。
優香の言う『彼によろしく』って……
誰のことなんだろう。
私の脳裏には
倉田さんと一緒に、眞辺の顔が浮かんでいた……。
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