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船越さんがいなくなると、室内は私と眞辺の二人だけ。
もちろん珍しいことでもなく、いつものことなのに、
私は一瞬かすかな緊張を覚えた。
眞辺は手元の作業に集中しているのか無言だ。
私はそのことに安堵しつつ、眞辺の調子に合わせて無言でいると、いつの間にか本当に仕事に没頭していた。
どれくらい経ったのか、沈黙を破ったのは眞辺のくしゃみだった。
「大丈夫?」
私も思わず手を止めた。
「なんともねぇよ」
返ってきた眞辺の返事は、言葉とは裏腹に明らかな鼻声だった。
「夕べ……途中からちゃんと布団被ってなかったから……」
「大丈夫だって」
「でも、寒かったでしょ?」
私が言うと眞辺は「そんなことねぇよ」と、もう一度否定した後で小さく笑った。
「布団なくてもお前の体温であったかかったし」
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