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「え?」
眞辺の口からさらりと出た言葉に私は耳を疑った。
その言葉の意味を考えた脳裏に、
眞辺の熱い吐息とあのとき身体に感じた感覚がよみがえった。
しかし、『変なこと言わないでよ』なんて、ムキなれば、私だけが意識しているみたいで、
私は開きかけた口を一度閉じると
「ならいいけど……。無理しないでね」
などと言って平静を装った。
再び脳内を支配する夕べの残像を振り払うために頭を振ったが、
そんなことをしている間にも、
倉田さんとの約束の時間が徐々に迫ってきていた。
待ち合わせは19時で、私のマンションの前まで彼が迎えに来てくれることになっている。
ちらりと壁に目をやり、時計を見ると、17時を過ぎたところだった。
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