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「あの後……ちゃんと話して、帰ってもらった」
そう言った眞辺の顔は少し疲れていた。
「ちゃんと話して……?」
私が聞き返すと、眞辺は白状するように話し出した。
「俺は俺で、大人の対応してたつもりだったけど、あの女に言わせれば、『私から逃げてる』ってさ。
言われてみれば、そうかもしれねえな、って思った。
自分が興味がねえからって、適当にあしらってるようじゃ、マジで、それが【逃げ】なのかもな。
今日はあの女に、面と向かって『好きだ』って言われちまったし、
答えないわけにいかねえよな」
眞辺に言われて思い出す。
事務所内に響いた、彼女の心の叫び。
「俺には……」
「待って」
眞辺が口を開きかけたのを、私は咄嗟に止めていた。
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