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すると、彼はゆっくりと私の身体を離した。
「僕が『聞きたくない』って言っても、もう、ダメなんだね?」
私は彼を見つめ
「すみません」と、ゆっくりと頷いた。
「……わかった。とにかく温かいところに行こう。下に喫茶店があるから、そこでいい?」
私が頷くと、私たちはエレベーターに乗って最上階から一気にレストラン街に降りた。
エレベーターに乗っている間も、店に入るときも、倉田さんは終始私を気遣ってくれていた。
彼の優しさに、
奥歯をグッと噛みしめた。
レトロな雰囲気を醸し出した喫茶店は、上のレストランよりも暖かかった。
レストラン用に意気込んで着ていた私のワンピースは
この店では少し、浮いていた。
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