私の知らない色

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「……俺も。お前のおかげで気付けたわ」 杉浦が「よかった」と、目を細める。 「さて、頑張ろっか!」 杉浦が二人の間に活を入れるように身体の前で両手で拳を作った。 「そうだな。ぐずぐずしてると、日曜なのに徹夜になりそうだぜ。今日は早く上がってお前の手料理でも食べたいしなーー」 俺は密かな願望を抱いて、杉浦を見てニヤリと笑った。 アイツは困った顔はしない。 ただちょっと照れたように、そして、その先のことを想像したのか少し顔を赤らめる。 「……早く終わったらね」 しまいには自分の手のひらで顔をあおぎながら目を逸らした。 「ゼッテー、終わらせる」 俺は気を良くして椅子に座り直して早速ペンタブを握った。 杉浦は俺が黙ったのを確認すると、安心したのか自分も仕事に集中し始めたらしく、俺たちはしばらく各々の作業に没頭した。
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