私の知らない色

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紅屋の菓子のパッケージデザインは、既に俺も考えていてほぼ仕上げにかかる状態だった。 しかし、今日の橋爪のデザインを見ていると、もっといいものができるような気がしてくる。 「橋爪が持ってきたデザイン……結構いいかもしんねえ。ちょっとアレンジ入れて使ってみるか」 俺は橋爪のつくったオリジナルからコピーを作ると、そこに手を加え始めた。 「橋爪くん、喜ぶね」 杉浦の声が聞こえたが、俺は自分で返事をしたのかしなかったのかもわからなかった。 集中力がピークに達し、手の動きが間に合わないほど、頭の中にデザインが生まれてくる。 モニターから目を離している場合ではないし、手も止めるわけにはいかなかった。 杉浦もそれきり黙って俺に話しかけることもなかった。
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