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俯いていた杉浦の長いまつ毛がゆっくりと上を向いた。
「ねぇ……今回、上手くいったら、今度は一緒に……実家に行ってくれる?」
すぐに反応できなかった俺に、杉浦は焦ったように片手で半分頬を覆った。
「あ……、ちが、違うよ。変な意味じゃなくて、しばらく帰ってないし……」
居場所の落ち着かない手で今度は耳の裏辺りを撫でている。
「私の仕事を知ってもらう、いい機会かなって思って……」
杉浦が家族との間に感じている小さな溝を、
一緒に埋めることができるのなら、
俺は、杉浦の恋人である前に、
同僚で、友人であったことを心から誇りに思う。
「今度こそ、紅屋で手土産買って持って行こうな」
俺の目尻が下がると、杉浦がホッとした顔を見せる。
「そのときは、きっとパッケージも新しいな」
と付け加えて笑うと、杉浦も笑顔で大きくうなずいた。
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