番外編【新人デザイナーの憂鬱】

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二人に助けられ、気持ちを切り替えて作業を始めようとしたが、すぐに手が止まった。 耳に流れ込んだフレーズに心臓がドキリと反応したからだ。 「……広報部の北村さんはいらっしゃいますでしょうか?」 さっき、電話があった菓子メーカーの先方担当者だった。 心臓の音は速まり、その下のみぞおちの辺りがヒヤリとする。 電話の向こうで取次ぐ間が、俺にとってはいたたまれない長い時間に感じられた。 「アートプレイの杉浦です」 電話が取り次がれ、杉浦さんがお世話になっていますと、挨拶する。 杉浦さんは明るい声色で短く言葉を交わすと、 「先程連絡をいただいた件ですが……」 と、話を切り出した。
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