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杉浦さんはニコリと笑うと、自分のコーヒーを淹れに休憩スペースに行ってしまった。
その背中をぼんやり見つめていると眞辺さんに頭を一発小突かれた。
「見とれてんじゃねーよ」
「べ、別に見とれてなんかいませんよ! 見てただけですよ」
俺は思い切り振り返って反論した。
だいたい……
俺が見とれてたって、眞辺さんにそれをどうこう言われるいわれはない。
《まだ……》
眞辺さんのものでもないんだし。
そう、《まだ》……。
眞辺さんが杉浦さんを好きでいることはこの職場では誰が見ても明白な事実だった。
それは、眞辺さんがあからさまなわけでもなく、彼が自分から公言しているわけでもない。
ただ……
感じるだけ。
誰もが感じ取れる彼の気持ちに、
どうして、当の本人がこうも気付かないものなのか。
あんなに……
近くにいるのに。
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