番外編【新人デザイナーの憂鬱】

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「杉浦さんて、本当に悩みなんてなさそうですよね」 俺は少しぬるくなったコーヒーをすすった。 「いろいろ充実してそうだし……。何でも完璧ですしね」 俺が言うと、眞辺さんは杉浦さんがいる給湯スペースの方へちらりと目をやった。 「……どうだか。 人は見かけによらねえぜ」 「え?」 ぼそりと言う眞辺さんの言葉が聞き取れず、すぐに聞き返したが眞辺さんは「何でもねえよ」と、席に座るとコーヒーカップを手にしたままもう片方の手でマウスを握った。 眞辺さんがモニターに向かってマウスを握ると、たやすく話しかけることはできない。 なんだかシャットアウトされているような気がするからだ。 実際、集中している眞辺さんに話しかける勇気があるのは…… ……杉浦さんだけだから。
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