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招かれた客
ガラッ……。
「よっ!餃子二人前!」
開いた扉を見つめ、悠人は大きくため息をついた。
「小夜子さん。ここバーか何かと勘違いしてません?」
客が多いとは言えないこの小さなラーメン屋の扉が23時の閉店間際に開くとき、必ずそこに小夜子の姿があった。
デート返りか……はたまた合コン返りか。
少なくても男に会ってきたことを容易に想像できる小夜子の姿に悠人は苦笑いを浮かべた。
「バーで餃子二人前頼む馬鹿いないでしょ。あっ、あとビール追加」
「うちの餃子をやけ食いの材料に使うのやめてくださいよ」
餃子を裏返しながら呆れたような声を発する悠人に、
「何でやけ食いって決めつけるのよ~。食べられる量しか頼んでないでしょ」
と、出されたビールを片手に小夜子はふくれっ面を返した。
「うまくいってたらここにいないでしょ」
「まぁ、そうなんだけどね」
ビールを口にふくんだ小夜子がふーっとため息をついた後、二人の間には静かな時間が流れた。
「はい、お待たせ。で、今日は何がダメだったんですか?」
目の前に置かれた餃子と共に投げかけられた言葉に小夜子は待ってました!と言わんばかりに目を見開いた。
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