閉店間際の客

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閉店間際の客

「いらっしゃい……ませ」 閉店間際の扉の音に思わず反応した悠人は、そこに立つ見知らぬ客に笑顔を向けた。 「もう閉店?」 「あー、そうですね。でも簡単なものでしたら……」 「いや、また来るよ」 「ありがとうございます」 そう言って頭を下げた後、一人になるととたんにため息が漏れた。 もう三か月。小夜子が店に来ていない。 小夜子が来なくなってから、意外と閉店間際に尋ねてくる客が多いと気づいた。 彼女の印象が強すぎて、これまで他の客の印象が薄れていたのだと悠人は初めて気づいた。 そして思った以上に小夜子の来店を待っている自分に戸惑ってもいた。 暖簾を外し、店の中に戻ると招き猫の貯金箱がじっと悠人を見つめているような気がした。 「お前も寂しいよな」 そう言って頭をなでると、ひんやりとした感触が余計に心を虚しくした。
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