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「いただきまーす」
一口食べた後、幸せそうに笑った小夜子はその直後にハラハラと涙を流した。
「ごめん。おいしすぎて泣ける」
「小夜子さん……」
悠人が小夜子の傍に寄り手を伸ばそうとすると、小夜子はフルフルと首を振った。
「今日は大丈夫」
「えっ……」
「一人で生きていく強さを身に着けないと」
小夜子のその言葉に、悠人は伸ばしかけた手をおろし、ぐっと拳を握り、感情を鎮めた。
「引っ越ししようと思ってるの。今の家、一人だとちょっと広すぎて」
「どこに……」
「んーどうしようかな。もしかしたら、街を出るかもしれない。思い出が多すぎて、寂しくなっちゃうのよね。だから、ここにも来れなくなっちゃうかも」
悲しそうに微笑む小夜子に、悠人は言葉を返すことができなかった。
「……じゃあ、私、帰るね」
「えっ」
「ここに来るのももう最後になるかもしれないから、悠人くんの餃子が食べたかったの。ありがとね」
「小夜子さん、あの……」
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