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困った表情を見せる悠人を、小夜子はすっと抱きしめ背中をさすった。
「今日までありがとう。最後くらいは私が悠人くんを慰めてあげよう」
しばらくの沈黙が続いた後、小夜子は
「じゃあこれ、お代。悠人くん!またね!」
そう言って小夜子は振り返ることなく店を出た。
静けさを取り戻した店内で、悠人は自分の心臓の高鳴りが響き渡っているような感覚を覚えた。
じっと小夜子が置いていったお金を見つめた後、はっと我に返った悠人は、慌てて彼女の後を追った。
「小夜子さん!!」
悠人の声に振り返った小夜子の頬は濡れているように見えた。
「悠人くん、どうしたの?」
「お釣り……!」
「いいのに、そんなの。いつも受け取ってないじゃない。お礼よ」
「今日は僕、何もしてないから」
「真面目だなー悠人くん」
笑いながら近づいてきた小夜子に、悠人は抱えてきた招き猫を渡した。
「何これ!重っ……」
ずっしりとした重みに耐えられず小夜子は少しだけ体をぐらつかせた。
「これ、今まで小夜子さんが払ったお金のお釣り」
「こんなに……」
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