招かれた客

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「30歳だから結婚って。それって結局ラベルしか見ていないのと一緒だと思わない?中身は一人一人違う人間で幸せな生き方も人それぞれなのに。勝手に幸せはこちらです、って決めつけられて。私はそんな生き方勘弁」 「そうですね。僕は、小夜子さんみたいな生き方も良いと思いますよ」 「さすが悠人くん。分かってる。この店だって、ラーメンも餃子も本当においしいのにね。ラベルで見ている人って人生損しているわよね」 暗に店の外見が汚いと言っている小夜子に悠人は 「小夜子さん、余計なお世話です」 と釘を刺した。 「ごめんごめん。ちょっと酔ってるかも。ねぇ……悠人くん、もう閉店でしょ?お願い」 小夜子の言葉で時計を確認した悠人は 「あっ、本当だ。ちょっと待ってください。暖簾外してくるんで」 と言葉を残し、外へと出た。 ひんやりとした空気で息を吐くと、白くなった気体がふわりと宙に舞った。 暖簾を外し内側から店の鍵を閉めると、小夜子は待ってましたと言わんばかりにばっと手を広げた。 「少しだけですよ」 そう言って、悠人が小夜子の隣に座り体を抱きしめると、小夜子はそれに答えるように悠人の体にしがみつき 「いつもありがとう」 と言葉を発した。 「いいえ、これくらいしかできませんから」 そう言って、悠人がそっと頭をなでると小夜子はいつものように悠人の胸の中で涙を流した。
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