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「この間はごめんなさい。今度からはちゃんと食べられる量だけ頼みます」
そう言って、再び小夜子が現れたのは、それからわずか一週間後のことだった。
「こちらこそ、きつい言い方をして」
「いえ……あの、それであなたに一つお願いがあるんですが」
「お願い?」
「私を少しだけ抱きしめてもらえませんか」
悠人は、完全にやばい人に目を付けられてしまったと悟った。
ストーカーか何かか。そうなると、いつかはこの店を立ち退かなくてはいけないくらいの大事になるかもしれない。
そう思いながらも、なぜか悠人は小夜子を見捨てることができなかった。
それから一年、小夜子は当たり前のようにこの店にやってくる。
これだけ、愛を渇望しているように見える小夜子が、なぜここまで結婚を拒むのか、正直悠人には分からなかったが、自分にしがみついている時の小夜子がいつもの勢いをすべてどこかに投げ捨てたような弱々しさがあるということだけは、しっかりと感じ取っていた。
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