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「小夜子さん、こんなに寂しがり屋なのに結婚したくないって、ちょっと矛盾してません?」
「悠人くんまでそんなこと言わないでよ」
「すみません」
そう言ってもう一度、力強く抱きしめると小夜子は、ふうと息を吐き悠人から体を離した。
「今日もありがとう」
「いえ……」
「これ、お代。置いてくね」
「あっ、ありがとうございます」
そういうと小夜子は、コートを握りしめ
「じゃあ、また」
と言って店を出た。
静けさに包まれた店内で悠人は、しっかり空になった食器を片付けた後、小夜子から預かったお代をレジに突っ込んだ。
お釣りは、レジの隣に置かれた招き猫の貯金箱がいつも通りに飲み込んだ。
「また招いてくれよ」
そう言って猫の頭を撫でると、小夜子の頭を触った先ほどまでの感触が思い出される気がした。
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