貴婦人のイタズラ

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温人さんも神妙な声で 「それは難しいな……」なんて言っている。 わかってる、そんなことは。 こんなに魅力的な人を 誰の目にも触れさせないなんて どこかに監禁でもしない限り 無理な話だ。 できるならしてしまいたいけれど。 小さな部屋に 彼を鎖で繋いで閉じ込めて 私だけが彼を見て、触れて 彼の目に私だけが映るようにできるなら そんなに幸せなことはない。 とても正気じゃないことを 考えてしまったけれど それを素直に白状すると、 「それはこっちのセリフだよ」 と、それは晴れやかな笑顔で返された。 温人さんはずっと、 結婚するよりも前から それこそ出逢った当初から 私に対してそんな 仄暗い想いを抱えていたという。
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