貴婦人のイタズラ

18/39
前へ
/39ページ
次へ
私が沈んでいると思い 明るくさせようとしての冗談なら 完全に失敗だし笑えもしない。 「お見送り、行くんでしょう?」 声をひそめて言った。 なるべく感情が そこに乗らないように。 嫌だって言ったのに、と 不機嫌を露わにするのは 仕事中なのではばかられる。 まあ隠したところで 温人さんには筒抜けだろう。 それなのに、と思うと 腹が立って仕方がない。 そう、いまは 哀しみよりも不安よりも 苛立ちの方が勝るようになっていた。 今日、10月31日で プレジデンシャルスイートの女主人は ヴィジュテラを去る。 もうすぐチェックアウトの予定だ。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

437人が本棚に入れています
本棚に追加