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プロローグ
「大我、夏祭り一緒に行こう」
『ごめん、無理』
3年前、俺は真奈美の誘いを断った。
たった一言で。
真奈美がその後どうなるか知りもせず。
俺は現在20歳。
墓参りに来ていた。
お盆だ。
すでに提灯を吊り下げてある墓所(はかどころ)もある。
空には雲が沸き立つ。
--白く濁った、熱く甘い夏を含んだ入道雲。
俺は線香を持ち、真奈美の墓所へ行った。
墓石に刻まれている。
<<松本家之墓>>と。
2年前、真奈美は殺された。
俺は共犯者の1人だ。
ーー殺されるまでのルートを作った張本人。
あの時、夏祭りに一緒に行っていれば……。
きっと……殺されなかった。
彼氏? 本当に俺は彼氏だったのか?
俺はできなかった、彼女を守ることさえ。
俺は線香を立てる。
手を合わせ軽く一礼。
線香の煙が舞い上がる。
天高く、大空へ。
俺はその煙を見続けた。
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