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「だってさあ! これ、俺の人生に於いて重大事件だよ!? 今まで夢だと思ってたけど、やっぱりどう考えてもあの感触は生だよ、生。ああ、くそ! 誰だよ、俺のファーストキス奪った奴は!」
誉は久住の背中を擦りながらふるふると震え、怒りを露にしている。
その姿をうっかり可愛いなと思ったが、いやいや違うだろうと頭を振る。
「てっきり久住が置いてったと思ってたけど、もしかしてジュースの差し入れも犯人…?」
いいかげん気付けよ、そう突っ込まずにはいられないが、久住は敢えてのスルーを選択した。
「…それ、見当はついてんの?」
「見当なんかつくわけないだろ。そもそも夢か現実かよく分かってなかったんだし」
不貞腐れて唇を尖らしている誉を見ているうちに、むくむくと悪戯心が芽生える。
「なあ、もしかしてキスされたと思ってるけど、実際は手が触れたとかそんなんじゃねえの?」
久住がそう言うと、誉はしばし考え込み「そういうこともあるのかな…」と悩ましい顔で呟いた。
──駄目だ、可愛すぎるだろう。
久住は思ったと同時に誉を抱き寄せ顎を掬った。抵抗される前にしてしまおうと間髪入れず唇を塞ぐ。誉は驚きすぎて硬直して動かない。これ幸いにと唇を柔く食み、感触を確かめながらゆっくりと舌で歯列を割って口腔に侵入する。舌を巻き取るように絡めると、誉は電気に触れたようにビクッと反応した。
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