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不機嫌さの残る声で了承され、思わず笑いそうになった。これ以上機嫌が悪くなって了承を撤回されても困る。気を引き締め、緩みそうになる表情筋に喝を入れた。
久住は顔を傾けながら狙いを定め、誉の唇へとゆっくり寄せる。睫毛が触れそうになる前に瞼を下ろし視界を遮った。
唇を柔らかく押し付けるだけの触れ合いを何度もする。触れては離れ、角度を変えてまた触れる。
物足りなさを感じつつも、早く寝込みを襲った犯人に気付けと念を送る。
──ファーストキスの相手が俺だって判ったらどんな顔すんだろ。
久住は自然と上がる口角に気付かず、唇だけの感覚を余すところなく拾って楽しんでいた。
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