翡翠色の秘密

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 昼休み。  疼きを堪えながら廊下を足早に歩く。本当は走りたいけど、走ってドアを蹴破りたいけど、反省室でシスターから説教をされるのはごめんだから、全力の早歩きで寮へ戻る。  くっそ! (あおい)のやつめ!  湧き上がる怒りで唇をギリギリ噛む。ともすれば膝が抜け、その場にへたりこんでしまいそうになる。そうならないように全身に力を入れ、寮の階段を昇った。  葵の居場所は分かってる。どうせ俺の部屋だ。俺と、黒川の部屋。 「はぁ。はぁ」  息を切らし、やっと部屋の前までたどり着き、ドアへ耳をくっつけた。 「はぁ、はあ、あっあうっ! んあああっ!」  艶っぽい葵の声を拾った途端、己の内部に刺激が走り息が詰まった。 「くっ……」  ドンドンドンドンドン!  拳をドアに叩きつける。高速のノックに部屋の中の音がピタリと止んだ。  さっきまで内部を苛んでいた感覚が消えホッとして力を抜く。 「葵! 居るの分かってるぞっ!」  寮生の部屋に内側から施錠するシステムは無い。あるのは外側から掛ける鍵だけ。その鍵は俺と黒川が一個ずつ持ってる。俺がここにいて、葵が部屋に居るってことは、相手は黒川しかいないんだ。  だからドアを開けることだって出来るけど、二人の絡み合ってる姿なんて見たくない。 「なんだ、(あきら)か……」  気怠そうな葵の声。  カチャと静かにドアが開いた。ほんの少しの隙間から鬱陶しそうな顔がちらりと見える。俺のシーツを緩く纏いながら。  そこから覗く透き通るような白い肌と、俺とお揃いの十字架のネックレス。それとは不釣り合いな痛々しくうっ血した痕。乱れた黒い髪。まるで合わせ鏡のように俺と同じ顔をした人間なのに、どうしてこんなにいやらしく見えるんだろう。 「今取り込み中だから」
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