翡翠色の秘密

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 あの感覚が初めて訪れたのは中三の時だった。  葵は遊びに出かけていて、俺は家で受験勉強をしていた時にそれは起こった。  突然、身体に大きな杭を打ち込まれたような衝撃が走って息を止める。持っていたシャーペンがポトンとノートへ落ちた。 「あ、いあ、なっ……」  その瞬間、葵の身に何かが起きたと悟った。昔からそう。おっちょこちょいな葵はよく怪我をした。本人には言わなかったけど、葵が怪我をした部分はなぜかズキズキと痛んだ。  俺はガクガク怯えながら、葵の携帯へ連絡した。でも繋がらない。ますます不安は募った。葵が死んだらどうしよう! と、オロオロしながら繰り返し電話を鳴らし続けた。  その間も、身体を引き裂かんばかりの痛みには襲われていた。凄く苦しかった。でもいつの間にか、その感覚が妙に妖しい感覚に変わっていく。  電話に出ない葵。  なに、葵、なにをしてるの……。  その夜、葵が戻ってきたのは門限の八時ギリギリだった。  葵がなにをしていたのか、聞くのが怖かった。でも、聞かずにはいられなかった。自分の身に何が起こっているのか知らなきゃいけなかったから。 「葵、今日、なにしてたの? 俺、ずっと電話してたんだよ?」  葵の部屋を訪ね、ジャケットをクローゼットへしまっている葵へおそるおそる尋ねた。 「ん? 何って……」  何か考えるように明後日の方向へ視線を向け、葵は視線を戻すとニヤリと笑った。頬にヒタリと葵の冷たい手が触れる。ドンドン近づく顔。  それはスッとずれ、葵が密やかな声で耳打ちした。 「気持ちいいこと」  クスッと笑う気配。愕然としている俺の頬から、葵の手が離れていく。  緩く握った拳で、葵は俺の肩をコンと小突き、部屋から出ていった。  男と? とは聞けなかった。聞いたら、バレてしまうから。  葵が体の奥深くに受け入れた時、俺が同じように感じていたことを――。
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