都市伝説 モリノヒト

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「わあああああああ~」 悲鳴を上げた理由は、立ち上がった者の姿です。全身に纏わりついたキノコのようなものに藻や植物。加えて、それに集るいくつもの羽虫や蛆やらが犇めき、そこら中を這いまわっています。ですが、それは紛れもなく“人間”でした。黴だらけのボロ布?毛布を纏っているものの、顔に当たる部分から除く血走った目が、こちらをしっかり捉えて離しません。 カメラを撮る事を思いつく暇はありませんでした。踵を返して走る彼の後ろを 「びゃひょっ!びゃひょっ!」 と狂ったような奇声を上げながら、追いかけてくる“それ”の声がすぐに続いたからです。 「お~い!〇〇!!〇〇!助けてくれ!」 走りながら、車で眠っている友人の名前を叫んでみますが、反応はありません。気が付けば、 自分がだいぶ村の奥まで入ってきてしまった事に、ようやく気づきました。そして、悪い事は重なるものです… 「うおっ!?わぁっ!!」 足もとに転がっていた大石に躓き、盛大に転んだ彼は、全身に走った痛みを覚えるより、 眼前に迫った“それ”が、転んで逆さまになった視界から、しっかり見える事に恐怖 しました。 「嫌だ!くるなぁぁぁ!」 喚き散らしながら、慌てて立ち上がり、自分を転ばした石を必死に掴んで“それ”に 向かって勢いよく投げつけました。 「げぇっ!」 頭?と思われる部分に石が当たり、蹲った“それ”を最後まで見る事なく、先輩はそこから全力で離れたそうです。車まで息も切れ切れで辿り着き、眠っている友人を叩き起こし、 エンジンをかけて発進させたのは、言うまでもありません。 「一体、どうしたんだよ?」 異常な興奮状態の先輩に、友人は何度も訪ねてきましたが、山を下りるまで一言も言葉を 発する事は出来ませんでした…
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