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「もう、村とか建物に住む必要は無いのな…」
そう語るTの顔は、恐ろしさを表情一杯に張り付けた様子でした。
以下は彼の体験です。私に話をした翌週、少し曇りがちな休日に朝から車を走らせたT達は、お昼前には先輩の話にあった“廃村”に到着したそうです。彼等は聞いていたものより、更に朽ち果てた様子となった村の中に少し躊躇しながらも入っていったそうです。
メンバーは彼以外に4人でした。事前に詳しく話していた事もあり、懐中電灯にバット、
危ないやつはガスガンなんてものを持ってきていました。村の中には、すでに家屋を突き破って大きな木が生えている所や、舗装してあった道のほとんどが草木に覆われていたりで“モリノヒト”どころか、パンデモーニアム(お化け園)のような様相を呈しており、何処から何が飛び出してきても、可笑しくない感じだったと言います。
30分程で、村の入れそうな家屋は一通りまわりましたが、家の中は床が抜けて、歩けませんし、先輩が言っていた“黴だらけの布団”も何処にもありません。緊張していたメンバーも、その内にふざける様子を見せ始め、ガスガンで家屋の腐っている部分を撃ち抜いて
みたり、バットを振り回して玄関の引き戸に残っていたガラスを割ってみるなどの悪戯を
無人の村で大声をだしながら、始める始末だったそうです…
「特に変わった事もないし、そろそろ帰るか?」
村に入って1時間程立ち、悪戯にも飽きたメンバーを見計らってTは声をかけました。
時刻は午後2時ちょっと前、元々、曇りがちな天気です。薄暗いドンヨリとした雲が、
急な雨の心配を抱かせるようになってきました。
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