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「触ってもいい?」
「どんな流れだよ!」
「本当に触ってるのかどうか、思い出したいから」
そう言うと、斎間は指先でちょんと、腹に触れた。くすぐったくて、腰が引ける。
「わからないや。もう一回、いい?」
「いや、ちょっーー」
寝ぼけているときの触り方と打って変わって、斎間は腹を甘い手つきで撫でてくる。
「バ、カ……」
「夢なんじゃないの? おれ、先生のことはこういうふうにしか触らないよ」
くすぐったさと、じわじわと押し寄せてくる悦びに、声が上ずる。
「ゆ、めじゃ……っ」
「夢だよ。おれに触られたくて、先生は夢を見てたんだ」
斎間は脇腹を撫でながら、Tシャツの裾をまくって乳首を口に含んだ。寝起きの体に、強制的に与えられる熱――。
「ん……っ」
「エッチだね……」
乳首を指にまかせ、斎間の舌がはむっと西の唇を食べるように口づけた。口の中に、斎間の舌が侵入してくる。口内が二つの舌と唾液でいっぱいいっぱいになり、快楽と苦しさで舌を外に逃がす。
そんな舌先を斎間の舌が追ってきて、可愛がるようについばんだ。
「は、あ……っ」
粘度の高い水音だけが、耳に入ってくる。聴覚さえ、犯されているような気になる。
東京に来るたび、斎間は西の1LDKの部屋に泊まっている。机の上にある有機化学の論文が、視界の隅に映った。今日読もうと思っていたものだ。
ああ。もう何度、この部屋で抱き合っただろう。
西は目を閉じキスを感じながら、男の首に腕を回した。
行為の開始の合図である。すると、斎間の手が再び西の腹に触れた。
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