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「久しぶり~、元気してた?」
「おう、おまえは?」
「期末がボロボロで親にどつかれた」
「でもおまえのガッコって偏差値たけえじゃん。ボロボロっつってもさー」
「まあな。理央んとこは? 期末どうだった?」
「べつにフツー」
結局、保育園時代からの幼なじみである信太郎と聡とともに、通夜へと足を運んだ理央であった。
本当は一人で行くつもりだったのだが、ゆかり先生が亡くなったと聞かされたその夜、二人から「一緒に行こう」と誘われたのである。
信太郎も聡もいいやつだが、自分たちの話に夢中になると声がでかくなり、周りの空気を読めなくなる節がある。そういったところが不謹慎だと思ったから、一緒に行きたくなかったのだが。
屋外にある記帳の受付に並んでいるときから、二人はずっとしゃべっていた。
「んでさー、ソイツなんもねえところですっころんでんの。まじウケた」
「やべえな。ジジイかよ」
信太郎と聡は、高校生特有のくだらない話でケタケタと笑う。
だが、こいつらにしては小声である。まあいいか、と思い、理央は脳内で通夜のマナーを反復していた。
そのときだった。
「君たち、なにしに来たの?」
前に並んでいた大人の男が、こちらを向いた。
ずいぶんと身長が高かった。成長期に差しかかっているはずの理央たちでさえ、目線を上にやらないと、相手の顔を認識することができない。
「あ、えっと……お通夜に」
信太郎が口をモゴモゴとさせて言う。
「だから、お通夜になにをしに来たの?」
「お、お参り?」
聡と信太郎は顔を見合わせながら、自分たちを納得させるようにうなずいた。
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